パネルディスカッション>(3)印旛地区拠点病院の状況
がんの種別による骨転移がんの頻度
成田赤十字病院における緩和医療の現状
成田赤十字病院 外科 石井隆之Dr
成田赤十字病院における緩和ケアの歴史
成田赤十字病院の緩和医療の現状をお話ししてまいります。まず当院の概要です。702床、19診療科を持つ急性期総合病院です。地域がん診療連携拠点病院、地域医療支援病院などの機能を持っています。咋年の平均在院日数は12.5 日、病床利用率は93.2%とフル回転で、急患がきた場合空床を探すのにかなり苦労している状況です。
当院における緩和ケアの歴史ですが、平成12年7月に新病院ができそれに伴い緩和ケア病棟が6床できました(外科の病棟の奥に隣接)。外科病棟のナースのチームが兼任で看ています。またそれと同時にチームを起ち上げまして、さらに勉強会を始めております。
平成13年の12月に緩和ケア外来を開設しました。今はここがすべての窓口になっております。
そして17年の5月に院内すべての病棟を対象に緩和ケア支援チームの活動が開始しました。
緩和ケアチームの構成と活動内容
次に緩和ケアチームのメンバー構成です。医師が4名います。内訳は、外科医は私を含めて2人、呼吸器内科の先生が1人、精神科の先生が1人です。
看護師は、緩和ケア認定看護師が1人。彼女が中心になって緩和ケア外来および病棟のラウンドをしています。医師と看護師が中心のチームとなっています。
あとは薬剤師が1名、病棟の食事の献立を作る管理栄養士が1名、臨床心理士が2名、ソーシャルワーカーが1名おります。彼らは各病棟の支援チーム活動の中で、必要な状況に応じて活動しています。しかし、以上のメンバーはすべて兼任です。
活動内容についてですが、毎週月曜日15時半からカンファレンスをチームメンバー全員集って行っております。内容は、@緩和ケア病棟入院中の患者さんについて。A緩和ケア外来患者について。これは主に新患の紹介です。B支援チーム活動における問題症例を検討しております。
また、緩和ケア支援活動として、先ほどご紹介した認定看護師が中心となって、週に2回各病棟をラウンドして、それで必要に応じて「これは精神科の医者が介入したほうがいいな」と判断した場合には、精神科の医者が対応しますし、痛みなどの身体症状のほうでしたら外科、内科医師が対応します。それを月曜日のカンファレンスで情報の共有を図り検討するという状況です。
それから、月・水の午後1時〜3時ぐらいまで、だいたい1人当たり30分ぐらいの時間を取って、緩和ケア外来を行います。これは予約制です。
その他、私たち自身のスキルアップ、それから院内職員の教育のために、院内勉強会を年に6回、また院外講師による特別講演を年に2〜3回行っております。こちらは医師会の先生方にも参加していただいています。
緩和医療の流れ
次に当院の緩和医療の流れについてです。先ほど言いましたように、緩和ケア外来が窓口になります。以前は院内からの紹介がほとんどでした。院内の困った患者さんが個々の外来で相談されて、入院加療が必要な場合には、緩和ケア外来を紹介、受診後緩和ケア病棟に入院。そして良くなると退院し、緩和ケア外来に通院。麻薬を投与している方が多いですから、2週間に1回、本人もしくは、本人が辛ければご家族が受診。そして具合が悪くなると緩和ケア病棟に再入院、看取り、という状況が多かったですね。
最近は他院からの紹介患者が非常に増えてきました。その流れが緩和ケア外来のメインです。その際、しばらく外来で頑張れそうだという時には通院で症状コントロールをし、やっぱりちょっときつくなってきた時には緩和ケア病棟に入院します。
また緩和支援チームができてからは、院内の各病棟を回っていますので、院内から緩和ケア外来、緩和ケア病棟に入ることはさらに少なくなりました。
また、ここ1〜2年ぐらいの間に退院支援室が次第に機能してきましたので、院内の緩和ケアを必要とする患者さん、いろんな支援を必要とする患者さんは直接こちらの退院支援室のほうに紹介されます。緩和ケア病棟もここを通して、それから在宅へという流れが最近多くなりました。
そこのところで当然、訪問看護ステーションや在宅医の先生に連携をお願いするわけですが、こちらのほうはまだ十分な連携がとれているとはいえません。したがって院内ですべて片づいてしまうことが多い状況です。(すなわち退院後は当院緩和ケア外来、具合が悪くなったら当院緩和ケア病棟に再入院、看取り。)今後はもう少し在宅医の先生方との連携の方向でやらなければいけないと考えています。
緩和ケアチームの活動実績
緩和ケアチームの状況について、一つずつ説明していきます。
まず外来に関しては毎週月・水の午後、予約制でやっております。
18年度には患者さんの総数が38人でした。前年度からの継続が11人、新規の患者さんが27人。この新規の27人の内訳を見ますと、千葉大や都内の大学病院からが8人。国立がんセンターを中心に千葉県がんセンターなどのがんセンターからが7人。一般病院からが5人、その他クリニックが4人といった状況になっております。当院の中から紹介された患者さんは3人、11%と少なく、これは先ほど言ったように、支援チーム活動の効果と考えております。
次に緩和ケア病棟に入院した患者さんの数について。平成12年からスライドのような形で推移しています。ピークが16年辺りです。この頃から緩和支援チームが活動を開始しておりますので、少し数が減っております。一時的に退院された患者さんもいますがいずれまた再入院されて亡くなるのがほとんどです。
3番目に緩和ケア支援チームの活動について。依頼件数は17年度は5月から始まっていますが39名、18年度が22名、19年度についてはまだ12月までの数で20名です。
依頼内容については少し特色があります。18年度と19年度を比べると、疼痛コントロールに関してはだいたい3割前後と変わりません。緩和ケア支援チームの活動当初はオピオイドの使用法、副作用対策やレスキューについて基本的な問題の依頼が多かったのですが、それに関してはいろいろな勉強会の成果のためか、19年度は依頼がありません。
緩和ケア病棟への転科に関しても、18年度は多かったんですが、19年度は各病棟のほうでの支援の活動の影響が出て0件でした。
18年度と比べて19年度では何が増えたかというと、精神症状コントロールです。せん妄や精神的にうつ状態になったり、そういった相談が非常に増えています。また難治性の腹水、吐き気など、その他の身体症状というのも増えています。こうした治療は最近の緩和支援チームの活動の依頼内容の中で高度で難しいものになってきていますので、私たちのスキルアップもしないといけないと感じています。
がんターミナル患者の地域連携
当院のがんターミナル患者の地域連携について。これはうちの退院支援室の師長さんにお願いして作ってもらいました。18年4月から退院支援室に依頼された患者の総数です。緩和ケア病棟だけでなく、一般病棟についてももちろん入っています。当院は退院支援室に訪問看部がありますが、そこに依頼されて退院したのが31名。当院以外の訪問看護ステーションに依頼したのが10名です。
その後の転帰ですが、当院訪問看護部に依頼した31名のうち当院にまた入院して死亡された方が19名。当院の救急室に救急車で運ばれてきて死亡を確認した方が6名です。これを合わせると、全部で61%ということになります。
在宅死は少なく、当院内科の主治医が往診している患者さんが1名、当院入院後に他の病院にお願いして看取ってもらった方が4名です。それから途中で宍戸先生にお願いした方が1名いました。
訪問看護ステーションに依頼した10人については、スライドに示したとおりですが、こちらも最終的にまた具合悪くなって当院に入院して死亡するという患者さんがほとんどでした。
胃がん末期、80代男性の在宅支援事例
1例事例を紹介します。この方は80代男性で胃がんです。当院外科で平成18年10月に胃の全摘手術を受けました。術後、他医院に通院していましたが、食事摂取ができなくなり、約1年後の咋年9月27日に再入院。腹膜再発の診断で、点滴をし少し元気になってきました。そこで予後が数ヶ月だろうということでご家族と相談し、おうちに帰って点滴を受けながら過ごすことになり、10月18日に退院しました。
在宅療養の問題点としては、日中1人になるということ、それから訪問してくれる診療医師の確保をどうするか、点滴をしてくれる訪問看護ステーションをどうするかということが考えられました。
退院支援の概略ですが、10月24日に主治医と病棟ナース、ご家族、ケアマネージャー、ヘルパー、訪問看護ステーション、退院支援室で拡大カンファレンスを行いました。その結果、点滴は訪問看護ステーションでお願いする、診察と点滴指示は今までの先生にお願いすることになりました。また、この方は視覚障害もあったため、日中家族が不在の時は、ヘルパーさんに依頼して食事の介助や服薬の声がけ、入浴介助など支援することを決め、10月31日に退院されました。
その後の経過については、在宅になり食欲も増進されて過ごされていましたが、1月9日からがん性腹膜炎の悪化で、最期には当院外科に入院して2月4日に死亡されました。
在宅療養には壁がある
実際に働いていて、在宅療養をするには壁があると感じます。それは1つには成田地区において往診医が極めて少ない。24時間体制で往診する負担や急変時の対応の困難さから往診医が少ないのだと思うのですが。
また、緩和医療の活用ができる医師が少ないのではないか。患者の苦痛が軽減されずに、結局在宅療養ができなくなって再入院する方が多いのではないかとも思います。
さらに、先ほど船橋の先生のお話の中では訪問看護ステーションが随分いっぱいありましたが、成田地域は少ないのではないかと思っています。実際、当院の訪問看護部も24時間体制ではありません。
そして、一番大きいのはやはり患者・家族の在宅療養に対する不安だと思います。病状の悪化、家族への負担、病院にいれば安心ということがあるためでしょう。それから、「在宅はいいよ」ということを理解して受け入れするまでに時間がかかり、そのうちに病状が悪化してしまって自宅に戻れないケースというのが非常に多い。その辺が問題ではないかと思っています。
在宅緩和医療への移行の問題と課題
最後に在宅緩和医療への移行の問題と課題を挙げました。
まず患者急変時におけるバックアップ病床の確保の困難が挙げられます。先ほど言いましたように、当院は常に満床に近い状態です。当院のかかりつけで訪問看護を受けているとか、緩和ケア外来のかかりつけだという患者さんでさえも、救急隊から収容要請があっても満床のため断るというケースが1、2例あったという話を聞いて、私たちもびっくりしました。こういう状況が続くと患者さんも安心して在宅にいけません。これを解決するには、院内のベッドコントロールの整備はもちろん、近くの病院との病病連携も必要なのではないかと思います。
また、在宅医の確保も大きな課題です。これについては成田地区の病診連携協議会などで、地元医師会の先生方といろいろ話し合っていますが、話が進展しません。先日さくら風の村訪問診療所の三嶋先生と面談してお願いしたところ、快く「往診やりますよ」と言っていただき非常にありがたく思いました。早速、緩和ケア病棟で入院中の患者さんを1人診ていただきました。ですから、実際に足を運んで在宅医の先生のところに行ってお願いするのが一番いいのかなと、今思っています。
それから、在宅医の緩和医療の質の向上も課題です。耳鼻科の先生とか、眼科の先生がターミナル患者を診るのはちょっと難しいと思いますし、対象としては、やる気のある地域の先生たちを対象に勉強会、研修会などを考えなければいけない。その辺は渡辺先生などともご相談しながら、進めなければいけない問題だと思います。
最後に、患者・家族、それから医療者の在宅医療に対する啓蒙、意識改革も非常に大事だと思っております。
≪2008年2月10日 在宅医懇話会第2回研修会≫
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