在宅医懇話会

自宅でのがんの痛み治療
「自宅での有利な点、不利な点、その工夫」

宍戸内科医院 宍戸秀樹

略歴

 平成7年山形大学医学部卒業後、千葉大学医学部第一内科に入局。内科全般を臨床した後、平成13年に聖隷三方原病院のホスピスに勤務。平成17年4月より宍戸内科医院に勤務し、在宅診療を行う。多くの終末期の患者に関わり、在宅医療に関しては現在までに250名の診療し、うち130名を在宅で看取った。そのうちがん患者が100名を占める。中でも疼痛治療については病院と在宅の両面から豊富な臨床経験を持つ。

在宅での疼痛緩和の基本は本人の自律を支援すること

 私はこの中では最も若輩者ですが、在宅における疼痛緩和の実際ということで、早速始めさせていただきます。
 在宅での疼痛緩和ということになりますと、「難しいのではないか」というのが、多分一般的な皆さんのご見解だと思います。鎮痛剤の使い方というのは、つきつめれば難しいし、疼痛コントロールの難しい人は確かにいらっしゃいます。けれども、基本的にはそれほど難しくないと捉えていただいていいと思います。
 私は在宅における疼痛緩和の基本的な考え方というのが一番大事であると認識しています。あとは工夫さえすれば、病院と在宅において可能な疼痛緩和手法には、ほとんど差がないと感じています。困難例にどう対処するかが課題ですが、これは手前味噌になりますが、「困った時の在宅医懇話会頼み」ということで、このシステムを利用するのが1つの方法になると思います。
 在宅における疼痛緩和の基本的な考え方ですが、家ですから本人がどう生活していくかということが基本になります。本人がどうしたいか、本人の自律ということに基づいた疼痛緩和を考える必要があると思います。これは自宅でなくても基本的には一緒だとは思いますが、特に家で過ごす場合には重要になってきます。
 自律支援に基づいた疼痛緩和を考えるということは、疼痛緩和の目的を考えるということにほかならないと思います。そして自宅であることの有利な点、不利な点を考え、基本に忠実な疼痛緩和をまず行っていくということが大事です。
 あとは家ですので、過剰な医療行為は基本的にはあまり行わない方向で考えて、だいたいの症状緩和はできると思っています。病院がそのまま家に入ったものが在宅医療ではありませんので、病院医療を必要以上に持ち込まないということが大事になります。また、コミュニケーションがすべての行為の基盤にあると考えています。少しこの辺りについてお話ししていきます。
 全体的には薬の使い方等、先ほど2つ講演がありまして、十分にお感じになられた部分、勉強された部分があると思いますので、今日は総論的な話になってくると思います。 

在宅では疼痛ゼロが目的ではない

 疼痛緩和の目的の基盤には、先ほどお話しした自律の支援があります。ですから、本人が自律した生活を送ることができることが大切です。自律した生活というのは、自分で歩けるなどという「自立」ではありません。「自律」です。自分がどうしたいと感じているのかを達成できるために、どのような対処方法をご本人が取れるのかということを支援していくことが必要になります。
 ですから、疼痛の緩和の目的は痛みをゼロにすることではありません。痛みゼロを目指してしまうと、痛みの緩和だけを目指す、医療の色が非常に強い在宅生活になってしまいます。生活視点ではなく医療視点になってしまう危険性があります。ですから、生活に困っていないか、安心して生活を送ることができているかということが疼痛緩和の重要な目標になってくると思います。
 また、すべての疼痛がゼロにできるのかということも、この疼痛ゼロが目標でないことの1つの理由になります。実際にすべての痛みがゼロにできるのかというと、がんは進行していきますから、体もだんだん弱っていきます。100%痛みのない生活というのは基本的に難しいので、その中でどのように自律を大事にして過ごしていくかということが重要です。先ほどお話ししたように、これは全部コミュニケーションが基盤にあります。自宅での生活をどう送ったらいいか、自律=autonomyですね。

困っていることを表出できるコミュニケーションを

 次に症状緩和のためのコミュニケーションについてです。コミュニケーションにおいて、医療者の知りたいことを中心にしないことが大事だと思います。
 「痛いですか。苦しいですか」とだけ聞いていないか振り返ることは、非常に大事になります。「痛いです? 痛いです?」と聞くと、患者さんは痛みが出てくるんじゃないかと、痛みのことを終始考えた生活になってきます。それだけ不安になったり、痛みを呼び起こしてしまう可能性があると思います。
 先ほどの繰り返しになりますが、生活の中で本人が何を困っているのか、困ったことを表出できるようなコミュニケーションが必要です。そして、困っていることにはタイムリーに関わる必要があります。よく他のヘルパーさんや訪問看護ステーションさんと連携してやるのですが、特に医療的な知識が薄いヘルパーさん等と連携を取ると、「今度先生が来た時に聞いてください」という対応になることがあります。そういうことではだめですね。タイムリーに関わるということが重要になります。

自宅は安心して過ごせる、余分な医療行為の要らない場

 自宅での特徴として、亡くなる当日から2〜3日前までだいたい患者さんは歩きます。ご飯を食べます。亡くなる直前までだいたい会話をします。ちょっと極端な言い方ですけれども、こういう傾向があります。もちろん脊髄の転移で歩けなくなったりする方がいるし、腸閉塞や嚥下の障害が強くて食べられない方もいらっしゃいます。けれども、全般的に体力が自然に低下していくと、こういう形になります。これが1つの特徴です。
 本人が希望さえしていれば、自宅は本人にとって最も安心して過ごせる場所、住み慣れた場所です。また、余分な医療行為を必要としない場所でもあります。ですから、自宅にいる方は他の方法を提示しても、薬を飲みます。一応持続皮下注などの提案は必要に応じてしますが、「いや、いいですよ」と言って、口から摂るんですね。自宅は生活空間であって、そこで生きているということです。生活する、生きるということは、口からものを摂るということにつながりますから、多分、薬を飲むのではないかと感じています。
 自宅で過ごすことと痛みとの関係もあります。「痛い」と訴えるのは、疼痛であるとは限りません。不安や淋しさかもしれません。「痛いなあ」と言った時、ご家族がそばへ来てさすると、すごく安心して痛みがなくなってしまうわけです。ですから、自宅での安心感が痛みを軽減する可能性があると思います。
 また、生活していますから、自宅では痛みのことばかりを考える必要はありません。それと自分の思いに近い生活が可能な場所ですので、自分の自律が保たれていれば、恐らく苦悩は減少するかなと思います。自分がこうしたいと思ったことができているので、苦悩が減少するのではないでしょうか。そうすると、自宅のほうがもしかしたら病院よりも症状緩和には有利な場所ではないかと感じます。

医療者がそばにいなくても大丈夫なケアを

ただし、自宅と病院の違いを考えながら、どう対処していくかということを考えなければなりません。自宅にはすぐそばに医療者が存在しないということが、病院との大きな違いです。病院では医療者がすぐそばにいることによる安心感がありますが、自宅ではこの安心感は得られません。
一応24時間体制を取ってやっておりますが、24時間体制を取っているといっても、すぐに医療者が駆けつけられるわけではありません。偶然診療所にいる時に電話がかかってきても、遠方の方であれば準備して着くまでに30分ないし1時間かかる場合があります。全く逆方向に訪問をしている場合は、そちらの患者さんに「ちょっとごめん」と言って出てくるわけにもなかなかいきませんので、電話があって数時間後に到着ということもあります。ですから、それをカバーしていかなければなりません。
 また、必要な薬剤や物品がすぐに用意できるとは限りません。夜間、痛みが出てきた。この薬が使いたいんだけど、手元にない。じゃあ、処方しようといっても、調剤薬局はもう夜で閉まっているということは、十分にあるわけです。ですから、これらをクリアすることが在宅完結を可能とする在宅ケアにつながります。
 では、医療者がそばにいない不安にどのように対処するか。これは医療者がそばにいなくても良いようにケアをしていけばいいわけです。家族が患者さんの状態の変化を見ていけるようにケアをする、ということが大事になってきます。本人の自律に基づく家族ケアということです。「本人はこうしたいと思っている」ということを中心に、ご家族をケアしていきます。
 そうすると、「これでいいんだ」とご家族が思えるようになってきます。症状の意味づけができるようなケアですね。「痛いと言っている」「夜寝ない」「夜になると、すごく呼ぶ」とか、痛みとちょっと関係ない部分もありますが、終末期におけるせん妄様の症状、例えば「何かが見える」「お迎えが来た」「そばにお母さんが立っている」とか。そういうものに意味づけができるようなケアが必要であると思います。
 あとは患者の変化に対応できるようなケアが大事になります。つまり痛みに対しても、苦痛に対する対処が自宅で家族がきちっとできるようにしていくことが重要です。また、いつでも医療者と連絡が取れることの保障をします。「いつでも連絡をしていいですよ」と言いますと、逆にそれが安心につながって、かえって連絡が来ないということがよくあります。

在宅での疼痛緩和の基本はWHO方式

 次に在宅における鎮痛剤使用の実際についてです。難しく考えずに基本に忠実に、つまり基本はWHO方式です。鎮痛補助薬は時には非常に有効です。ただ、先ほども出ましたように、眠気等の副作用、場合によってはせん妄を引き起こす可能性もありますので、注意する必要があります。その他の薬剤、過剰な医療の中止、薬以外の方法というのもあります。
 基本はWHOラダーです。特に家の場合、口からですね。第1段階で家で使いやすく、意外と使い勝手のいいのがアセトアミノフェンです。通常量1.2g分3で効く場合もありますし、もう少し高用量を使う場合もあります。基本的にはそれほど副作用を感じずに使えます。それほど強くないけれども、非常に使い勝手がいい薬です。
 時にはNSAIDsはオピオイドより有効です。骨転移痛や炎症を伴う疼痛に加えると非常に有効である場合があります。ですから、「オピオイド導入=NSAIDs中止」と考えるのは早計です。副作用を考えながら使っていく必要があります。特に臓器疾患や出血など、直接急な変化で命に関わるような副作用を持ち得ますので、それとのバランスで薬を使っていくような形になります。
 オピオイドのクリーンナップはモルヒネだと思っています。基本的にはモルヒネをまずある程度使いこなしていくことが基本です。内服ですべての速放剤、除放剤が揃っていて、経管投与も可能です。坐薬もありますし、注射もあります。これが全部揃っているので、いろんな状況に対応しやすい薬です。また、呼吸困難感を緩和する作用もありますので、非常に使いやすいお薬です。モルヒネを基本的に念頭に置きながら薬を考えていけば、少し整理がしやすいと思います。
新しい一番打者としては、出てきてからしばらく経ちますが、オキシコンチンがあります。坐薬が今のところないですが、中程度の痛みから使用しやすいので、非常に今、使用頻度が増えています。ただ、呼吸困難感を緩和する作用はモルヒネよりは少ないと思います。でも、実際に使ってみると、緩和する作用が若干はあるのかなと思います。呼吸困難感が強い場合はモルヒネに移行していく場合が多いです。
 代打としては、デュロテップパッチ、リンコデ、レペタンがあります。モルヒネで副作用が懸念されるなど、他剤を考慮する必要がある場合、オピオイドのローテーションをします。あるいはどんなに説明しても、「モルヒネは嫌!」という方へ使用する場合もあります。

レスキューなき在宅がん緩和ケアはない

 在宅での疼痛緩和で大事なのはレスキューです。レスキューなきがん緩和ケアはありませんが、レスキューなき在宅がん緩和ケアはもっとあり得ません。レスキューは在宅における最も不利な点を補う効果があるものです。自宅ではすぐに薬を準備できません。緊急往診も訪問看護もすぐに到着できるわけではありません。しかし、レスキューが準備されていれば、電話で「痛みがこうなんです」というお話があった場合、状況を伺って、「じゃあ、このお薬を使ってみてください」という指示だけで対応ができることが多いです。
また、自宅で対処できる方法があるということで、ご本人、ご家族とも安心感が得られます。対応方法がないと、本人は往診するまでの時間、「痛い! 痛い!」と言っていなければなりませんし、逆にご家族もその本人の苦痛を見ていなければなりません。これは非常にご家族にとって苦痛であり、後のグリーフにとっても良くないことですので、レスキューの準備というのは非常に重要になります。レスキューをうまく使っていくことで、とりあえずベースアップとしての対処もできるという形になります。
 ただ、レスキューの準備においては注意点があります。まず坐薬が使用可能かどうかを確認することです。以前、「奥さんが坐薬を使ったら死んでしまったから、自分は使いたくなかった」ということが後でわかった方がいました。坐薬の使用に本人が同意していることは重要です。あるいはご本人が入れることが難しければ、家族が入れることができるかということを確認していないと、いざという時に使えません。
 また、麻薬のレスキューの処方をする場合は、麻薬であることの説明が必要です。麻薬であることを知って、いざという時に使用を拒むことがあるかもしれないからです。
 それ以外に鎮痛剤ではないですが、感染による苦痛が起こるかもしれませんので、抗生物質も原則として必要です。これを常備薬として処方することには、法律上のいろいろな問題はあるかもしれませんが、基本的に必要だと思います。
 このほか、使うかもしれない薬剤を処方しておくこともあります。鎮痛補助薬や除放性のオピオイド、抗不安薬などです。だいたいこれだけ準備していると、ほとんど電話で対応できます。

自宅ならではの対処方法

 次に鎮痛補助薬について。詳しい話は先ほど出ましたが、眠気、せん妄等の副作用の注意が必要だということです。抗けいれん薬を入れて、抗うつ薬を入れて、ステロイド入れてと段々に入れていくと、いたずらに薬が増えていきますので、効果、副作用をしっかりと評価しながら、中止したり、新しい薬を加えたりする必要があります。
 その他の薬としては、ビスフォスフォネート、ソマトスタチン、スコポラミン、芍薬甘草湯等の漢方薬、利尿剤、抗生物質、湿布、塗り薬等の外用薬などがあります。時には鍼灸等の東洋医学が有効な時もあります。湿布も家族が貼って、貼ってもらったという本人の安心感がある場合がありますので、有効です。骨転移痛にコルセット、杖等の補助具を使う場合もあります。
 過剰な医療を中止することも重要です。不要な苦痛の原因となる輸液の中止などが代表的なものです。特に高カロリー輸液ですね。必要以上にやっていますと、腹水が貯まってお腹が張って苦しくなり、吐き気が出たりする場合があります。
 自宅は病院ではありませんから、できる医療の選択ではなく、生活に必要かつ十分な医療の選択という視点で見ていく必要があります。
 あとは薬以外の方法も検討できます。さするとか、マッサージです。「背中が痛いって言ってるんです。ずっと寝たままで」と言われた場合、「じゃあ、ちょっとさすってあげてください」、「ベッドと背中の間に手を入れてあげてください」と対処するだけで、症状が和らぎます。これはご家族が何かご本人に対してやってあげられているという方法を提示することにもつながりますから、ご家族が比較的状況の変化を見ていきやすくなると思います。
 安心とか、気が紛れるということも症状緩和につながります。生活していれば、痛みについて気が紛れるということがあります。やはり夜になるとちょっと痛みが出てきたりするのは、こうしたことからだと思います。

在宅での疼痛緩和の考え方

疼痛緩和は特殊技術を要することももちろんあります。持続注射、持続皮下注、持続静注、あるいは持続くも膜下なども実は益田先生からご紹介いただいて、1人うちで診たことがあります。腹水が貯まった時お腹の水を抜くとか、神経ブロック、放射線、IVR、手術。鍼灸やマッサージなども在宅では意外といい場合があります。
それでは、こうした特殊技術が実際に在宅で必要になるのかということです。確かに内服、坐薬で対処できないことがあります。内服できない時、痛みが急に強くなるような場合、難治性疼痛といった場合がありますので、こういうケースはいろいろ考えていきます。
ただ、在宅患者さんはだいたいぎりぎりまで食べられます。飲めなくなると予後1日か2日であることが多いものです。このため、自然な体力低下による内服困難は、ほとんど坐薬でコントロールの継続が可能です。ただ、坐薬使用困難例で持続注射が必要になる場合があります。しかし、「いつ使おう、いつ使おう」と言って、持続注射を使わずに済む場合が実際は多いですね。
食べられないから、モルヒネをデュロテップパッチへ切り替えたらいいかというと、デュロテップパッチは先ほど坂下先生からお話があったような性質を持っています。疼痛コントロールを非常に悪くするような可能性がありますので、NGだと私は思っています。ただし、イレウスがあったり、Schnitzler転移があったり、マイルズ手術などをしていて、坐薬の使用が難しいような場合、早急なタイトレーションが不要であれば、デュロテップパッチも有用な方法になっていくと思います。持続注射が必要になる場合やレスキュー用にどうしてもPCAシステムが必要になるという場合は確かにあります。
疼痛エマージェンシー、痛みが非常に強い時には、速やかに疼痛軽減を図りたいところです。内服・坐薬が使用できない場合、持続注射でタイトレーションを図ります。
速やかにレスキューの効果を得る必要がある場合、坐薬を使っても痛みが治まってくるまでになかなか時間がかかる場合などは、PCAをポーンと押すと比較的速やかに効果が上がりますので、PCAシステムを使う場合があります。ただ、痛みというよりも呼吸困難感の場合に必要となるケースのほうが多いのかなと思います。
動いた時の痛みの場合もPCAが必要になる時がありますが、だいたいそういう場合は「ちょっと休んでいると、落ち着くからいいや」と患者さんが思ってしまう場合もあります。内服・坐薬でレスキュー対応が困難な場合には、やはりPCAシステムが必要になります。
難治性疼痛については、注射薬の併用が必要な場合、ケタミンやソマトスタチンが選択肢となる場合があります。鎮痛効果と副作用のバランスが取れない場合や体動時痛の場合は神経ブロック、放射線などの方法を考えることがあります。けれども、訪問診療が必要なPSの患者さんは、病院に送って治療している間に亡くなってしまう場合が多くあります。このため、その治療の効果の意味合い、目的がはっきりしなくなってしまうので、適応にならない場合が多いと思っています。

在宅では特殊な症状緩和技術を必要とすることは少ない

 在宅における特殊技術の中の持続注射は実際どのぐらい使われているのか。うちの今年の10月までのデータでは、在宅でがんで看取った99人のうち持続注射を使ったのは29人、2割ぐらいでした。ですから、8割は使わなくて済むということになります。
一時的に持続注射を使用してそのまま病院行ってしまった、デュロテップパッチに切り替えたというケースが3.5%です。長期的な疼痛緩和、割と長めに使っていた方が7%ぐらい。また、死亡直前に内服困難になって使った方が10%ぐらいいました。ほとんど1日か2日、あるいは数時間の使用という場合もあります。やはり予後が読めないので、その時点でポンプが必要になることがあります。
 痛みで鎮静になる場合は非常に少ないですが、在宅死99人中3人ありました。1年に1人、3%です。つまりほとんど鎮静は必要なかったということです。在宅における症状緩和には、特殊な緩和技術を必要とすることは決して多くないわけです。
先ほど話しましたように、うちでオピオイドの持続注射は行ったのは20%でした。これに対して淀川キリスト教病院の緩和ケアマニュアルからの抜粋によれば、持続注射を使っているケースが95%です。私がホスピスにいた当時は、デュロテップパッチが出るちょっと前からでした。オピオイドはフェンタニルを多く使っていたので、持続注射は非常に多かったと思っています。
病院でないと難しい疼痛緩和手法というのは、在宅医療が必要な患者さんにはすでに適応にならないことが多いものです。ですから、こういった勉強会、あるいは在宅医懇話会のメーリングリストを利用するといいと思います。このようなコンサルテーション・システムを作ることで、患者さんの症状緩和を図ることができます。

疼痛の程度の評価は注意が必要

 疼痛の評価については、疼痛の有無・原因・程度が挙げられます。「医療者の共通言語の功罪」として、医学用語があります。「疼痛=痛い」なのかというと、決してそうではありません。「痛い?」と聞くことで、本人の困っていることが評価できなくなることがあります。「痛いですか?」とか「疼痛」という言葉は気を付けなければいけないと思っています。
 原因の評価のためには、やはり必ず診察はすべきだと思います。話を聞いて、手を当てて、聴診器を当てるということが重要です。これだけで患者さんは「自分の痛いところを診てくれようと、触ってくれた。話を聞いてくれた」と、すごく安心します。また、これをしないと、疼痛の原因はわかりません。
 また、必要に応じては血液検査を行います。血液検査を行う意味には、使用が難しい薬剤の判断も含まれています。「ステロイド使いたいな。でも、この人の血糖値はどうかな」ということもあります。あるいは本当にモルヒネでいいのとうぃ判断するにあたり、腎機能がどうなのかといったことで必要になってくる場合があります。
 画像所見は診察を補うものにすぎません。必ず診察をする必要があり、その結果、必要であれば画像検査を考慮します。
 評価は本人の評価でVASやNRSなど、いろいろ評価ツールがあります。他者による評価としてSTAS-Jがありますが、本人にしか痛みはわかりませんので、本人評価が本当は基本となります。ただ、VAS やNRSは気を付けて使っていく必要があります。痛みの程度を数値化することによって、医療者間で共通言語を持つことはできますが、それは医療者が知りたいような指標なんですね。本人が痛みばかりを気にする原因にならないように注意していく必要があります。

在宅での疼痛緩和で真に難しいのはコミュニケーション

疼痛コントロールに悩むような場合、診診連携というのもこれからは重要になります。核になる診療所へのコンサルテーションも必要です。メーリングリストなど、気軽なコンサルテーション・システム等も有用です。
無理をしないということも大事だと思います。疼痛緩和の図れる病院への依頼ということも選択肢の1つにはなると思います。自宅での苦痛の持続というのは、自宅で過ごしたいという気持ちを萎えさせてしまいます。家族のグリーフにも悪影響を及ぼしますので、病院という選択肢も思い浮かべなければいけないこともあるかもしれません。
こういったやりとりというのは、すべてコミュニケーションが基盤になります。ですから、在宅での疼痛緩和において本当に難しいのは鎮痛剤の使い方ではなく、コミュニケーションをどう取るかということだと思います。コミュニケーションのあり方によって、疼痛緩和の手法や実際にその疼痛緩和方法の効果が違ってくると思いますので、コミュニケーションが重要です。
逆に言うと、コミュニケーションをしっかりと取れば、疼痛緩和はしやすくなります。直接的な薬の処方が難しい看護師さんでも、しっかりとコミュニケーションを取ることによって、疼痛緩和の主役になれるのではないかと思いますし、そうなって欲しいと思っています。
コンサルテーションのシステムというのも非常に重要になると思います。また、「これでいいんだろうか」、「もっと楽になるんじゃないか」、「うまくできてないんじゃないか」と思われる時も場合によっては出てくると思います。そういう時に周りから「それでいいんじゃないの」と言ってくれる人たちがいるということは、非常に大事になってくると思います。以上です。

≪2007年12月2日 在宅医懇話会第1回研修会≫
▲このページのトップへ